アクティブラーニングと現行教育との本質的な違いって!?|プロジェクトデザインの実践例
10年ぶりに文科省による学習指導要領がかわり、「アクティブラーニング」という言葉の定義や中身が定まらず一人歩きしているように感じていますが、みなさんはどのように受け取っていますか?
日本語では「主体的・能動的に学ぶ」と表現されていますが、いったいどういうことなのでしょうか?
生徒が「やりたい」と言葉にしたことができれば「アクティブラーニング」でしょうか?ディスカッションやディベートなど、生徒が「発言する機会」を用意すれば「アクティブラーニング」と言えるでしょうか?
そもそも「教育」とは、「学び」とは、なんなのか?誰のための、何のためのものなのか?海外の事例や過去の日本の事例を参考にしながらも、先入観を持たずにゼロから考えてみます。
【わたしたちの結論1】
従来の「教育」とアクティブラーニングの「学び」は目的とゴールが違う!
Difference between Education and Learning: Purpose & Goal
国が与える「教育」、個人が得たい「学び」
○ 「教育」とは? ○
教育の主体 :国(政権の政策・文科省)が主体となって、何(教科と中身)を教えるかを決める。
教育の目的 :経済の成長のために、生産活動ができる労働者を育成すること。
教育のゴール:教育を受けて育成された個人が、労働者として経済へ参加すること。
戦後、足りないモノや建物・道路をつくるため、国が決めた「タスク(言われたことを、そのままできること)」を実行できる人材育成が必要となり、「仕事を覚える」訓練の一環として、[教科]をベースに設計されている。同じ品質で多量のモノを生産する必要がある時代には、仕事を覚えてタスクを実行する教育が適していた。
しかし、用意され与えられた「教科」が最初にある(ティーチング・ファースト)ため、教科(教えられたこと)からはやりたいことが見つかりにくく、受動的な学ぶ姿勢(パッシブ・ラーニング)になってしまう。
○ 教育=国(文科省)→教育委員会→学校→教員→学生 ○
◎ 「学び」とは? ◎
学びの主体 :個人が主体となって、何(知識・技術 ※現行の教科を含む)を学ぶかを決める。
学びの目的 :個人の尊重を目的とした、成熟した社会を実現すること。
学びのゴール:得たい学びを選択できる、尊重された“はたらく個人”となり、社会へ参加すること。
急速に経済が発展し、つくるよりも捨てるモノが多く、建物や道路も充足しており、既存のタスクが必要のない状況。よって、個人が決めた「課題(やりたいこと、できるようになりたいこと)」に取り組むという[活動]をベースに設計する。大量生産・大量消費の延長の時代に、わたしたちが直面している課題を解消する、また取り組みたい課題(やりたいこと)を見つけられる学びが求められている。
選択肢の中から自分が「やりたいこと」を最初に選択し、それができるようになるために必要な「知識・スキル ※教科含む」を習得できる(インタレスト・ファースト)ので、やりたいことを自分で実現できる可能性が高まり、能動的な学ぶ姿勢(アクティブ・ラーニング)になる。
◎ 学び=学生→サポーター(教員含む)→専門家 ◎
【わたしたちの結論2】
「労働」と「はたらく」は違う!
Difference between “Labour” and “Hataraku”(work)
生活のための「労働」、自分と周りのための「はたらく」
○ 教育のゴール、「労働」とは? ○
教育のゴール :教育を受けて育成された個人が、労働者として経済へ参加すること
前述のとおり、国が主体となった「教育」の目的は、経済成長のための「労働者の育成」と読み解きました。
[名](スル)
1 からだを使って働くこと。特に、収入を得る目的で、からだや知能を使って働くこと。「工場で労働 する」「時間外労働 」「頭脳労働 」
2 で、生産に向けられる人間の努力ないし。自然に働きかけてこれを変化させ、や生活手段をつくりだす人間の活動。労働力の使用・消費。
出典 デジタル大辞泉について |
「労働」とは、「教育(教科)」を通じて得られた【関心・興味】と【できること】によって、自分の生活に必要なお金やモノを手に入れるために、自分のからだを使うこと。
○ 労働=賃金・報酬を得るために、体力や知力を使ってモノ・サービスを生産すること。 ○
◎ 学びのゴール、「はたらく」とは? ◎
学びのゴール :やりたいこと・できることを尊重された個人として、社会へ参加すること
社会とは、「自分」と「周り」でできています。自分のためには周りが必要で、周りのためにも自分が必要です。
自分だけでは楽しいことも悲しいことも共有できませんし、社会は自分抜きではカタチにできません。
自分はなにがやりたいのか?できることは何なのか?
どうやったら自分のやりたいことをカタチにできるのか?そしてさらに、周りにも喜んでもらえるのか?
自分が美味しいモノを食べ愉しい時間を過ごしていても、目の前に座る人が食べるものに困ったり孤独に苦しんでいたら、心から愉しめるでしょうか?何も気にせず、気持ちよく生きられるでしょうか?
「はたらく」とは、自分自身が本来持っている「やりたい」(関心・興味)から増えた「できること」(知識・技術 ※教科を含む)で、自分の周り(はた)を楽(らく)にするために、自分で考えて行動すること、ではないでしょうか。
「やりたいこと」が「できる」ようになることで自分の中に芽生え、根付く自己肯定感と、実際に周りの役に立てたかではなく「役に立てるかもしれない」という貢献感を持てるように。
人はみな、はたらかなくては生きてはいけません。
お腹が空いたら食べ物を、寒かったら衣服を、安全に眠るためには住居を、自らの頭や身体を使って手に入れなくてはなりません。
「労働」も「はたらく」の一部です。しかし、「はたらく」には、自分だけでなく周りの誰かの悩みや困りごとを減らすための対策と予防が含まれます。
モノやお金が一部に集中し、飢えに苦しむ人がいる一方で余って捨てている現状があるならば、分配と仕組みづくりを。
犯罪が起きたら、犯した「人」(犯罪者)を排除するのではなく、「行為」(罪)の理解と再発の防止を。
遠くの水が汚れたら、原因の追跡と解決策を。
すべてが自分とつながっています。だって、「社会」はたくさんの「自分」の集まりなのですから。
「自分」ののぞむ「社会」は、自らの頭や身体を使ってつくらなくてはならないのです。
◎ はたらく=本来の「やりたい」から増えた「できること」で、周りを楽にすること。 ◎
今回はここまでです。
まずは、「教育」と「学び」の目的とゴールの違いについて考え、それぞれの目的である「労働」と「はたらく」の違いまでを紐解きました。
考えを深めていく中で微調整はあるかもしれませんが、家庭内や地域内または学校内や社内で、話し合いのきっかけとなる一つの結論(共通に「善い」と考えられる一つの答え)を提示できたと思います!
【方法②】[対話型学習] 他者の観点・選択肢と、共通の善い・合意へ導く対話の方法を学ぶ。
【方法③】[参加|活動型学習] 誰かの活動(プロジェクト)に、自分が“できること”で参加して学ぶ。
【方法④】[企画|活動型学習] 自分の“やりたい”から、活動(プロジェクト)を企画・運営して学ぶ。
・【Q&A】想定されるリスクや課題って何があるだろう?どう対策する?
※参考文献
Pingback: AIやロボットが活躍する未来で、人が「はたらく」姿はどう変わる!? | Think! management(シンク!マネジメント)()
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